恋愛境界線
差し出したストラップを見て、脱力した様に渚が肩をがくりと落とした。
「なんで、このタイミングでこんな物を出してくるかなぁ。今の流れだと、フツーは合鍵だろ」
その方が、こう、絵になるっつーか、と妙な不満を並べ立てる。
「そうだよね。ごめん、そっちは忘れてた!」
謝りながら、慌てて渚のマンションの鍵をバッグの中から取り出す。
渚が鍵を受け取ろうとして、その手前で動きを止めた。
「お前とは、幼なじみも今日で終わりにするから」
そう言われても仕方のないことだと判ってはいても、それでも渚の言葉は胸にぐさりと突き刺さる。
うん、いいよと返事をしなくちゃいけないのに、言葉が喉に詰まって、喉の奥がひりひりと痛む。
「本当はさ、そう言ってやりたいけど、やっぱり無理だわ」
終わりにすると言った瞬間の真剣さを振り払う様に、からりとした口調でそう言うなり、勢い良く私の手から鍵を奪った。