恋愛境界線
どちらともなく、はーっと息を吐き出して空を見上げる。
目に映る空は心なしか爽やかに澄んで見える。さっきまでは、その青さが寂しく見えていたのに。
「──例の件、たった今、社長に断ってきた」
まるで世間話でもするかの様に、なんの気負いもなく、渚が空を見上げたまま話す。
例の件というのは、縁談の件だとすぐに判った。
『遥が嫌だって言うなら今回の件は断る。だけど、そうじゃないのなら、この話は進めてもらう』
そう言われて、答えを出せずにいたあの件。
断ったと聞いて、自分がどう反応すれば良いのか戸惑う。
ホッとするのも、申し訳なく思うことも、どんな反応をしたとしても、今は渚を傷つけてしまいそうで。
「このタイミングで断ったのは、遥に対する当てつけとかじゃなくて、いい加減きちんと返事をしなきゃいけなかったから」
だから、自分自身で答えを出したのだ、と渚は言った。