恋愛境界線
シートを額に貼った課長の表情は、弱ってる所為もあってか、どこかあどけなく見える。
「こうしていても悪化するだけなんですから、課長は早くお布団の中に入って下さい」
「君の言う通り、私は布団に入るから、君は私の言う通り、家に帰りなさい」
立ち上がって寝室へと向かう課長にくっついて、後を追う。
口調はしっかりしているくせに、足取りはさっきよりも明らかに弱弱しい。
「さっきから帰れ帰れって、具合が悪い時くらい、素直に甘えればいいじゃないですか」
「私のことよりも、君は緒方君のことを考えるべきだろう?」
「渚のこと、ですか……?どうして、ここで渚?」
頭に『?』を浮かべる私に、若宮課長がため息を一つ吐き出して布団の中へと潜り込む。
「社長のお嬢さんとの縁談を断ったと、社内中で噂になっている。つまりは、縁談相手より君を選んだということだろう。それくらい、君に対して真剣な気持ちでいるのに、その君が他の男の所にいたら彼はどう思う?」