恋愛境界線
「あぁ、そのことですか……」
判ったなら帰りなさいと、私に背を向けて手を振ってみせる若宮課長に、「そうじゃないんです」と告げる。
「確かに、渚が縁談の話を断ったことは事実ですけど、だからといって、私と渚はそういう関係じゃないので」
「そういう関係じゃないって?君たちは付き合っているんだろう?……まさか、別れたのか?」
別れたと言えるほど、私と渚は男女としての付き合いは深くなくて、でも、まったくなんの付き合いもなかったと言えるほど、浅くもなかった。
結局は、すべては私が中途半端な態度を取り続けていた所為だけれども。
言葉にするには曖昧な関係を、どう答えるべきか迷っていると、課長がこっちを振り向いた。
「いや、無理に応える必要はないが……。そもそも私には関係のないことだしね」
気にしないでくれ、と言って、課長は再び私に背を向けた。
若宮課長にとっては、関係も興味もない話だろうし、具合の悪い時にそんな話をされても困るだろうけど。
でも――。