恋愛境界線

純ちゃんにはちゃんと確認済みで、数日前に奥田さんの画像を見せたら、間違いなくこの人だと断言した。


断言出来たのは、顔の記憶だけじゃなく、たまたま画像に写っていた奥田さんの腕時計までもが、有名なハイブランドの限定モデルで、あの時見た物と同じだったから、と。


そこまで話したにもかかわらず、奥田さんは「何だかなぁ。あれはほんの冗談なのに、本気にされても」と受け流した。


「女装画像を見せて、ちょっとふざけてからかったことまでそんな風に受け止められると、今後は迂闊に何も言えなくなるなぁ」


画像ということは、若宮課長の女装姿を盗み撮りして、わざわざ証拠として残した上で脅していたということ……?


「……っ、冗談だというのなら、その画像を削除してもらえますか?」


「削除もなにも、もう消したよ」


「嘘ですよね?」


保身の為に、奥田さんはまだ課長の画像を持っているはず。


「だから、冗談だって言ってるでしょ、冗談だって。男同士で軽くふざけてただけだって。同期の気安さっていうの?判んないかなー?」


どこまでもおどけて見せるこの人が、一体何を考えているのか、何が目的でこんなことをしているのか、さっぱり判らない。


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