恋愛境界線
判ってはいる……判ってはいるけれど、それでもやっぱり腹は立つ。
血が逆流してるんじゃないかと思えるくらい激しい怒りに、手のひらに食い込む爪の感覚に痛みを感じない。
聞いているだけで胃がむかついて、初めて人を殴りたい衝動に駆られる。
出来ることなら、目の前の人物だけじゃなく、過去の自分ごとまとめて殴りつけたかった。
けれど、若宮課長は不遜とも取れる様な態度で腕を組み、奥田さんに反撃した。
「だから、好きにすればいいと言ってる」
「あーそうかよ。それならまず初めに、さっきから何のことか判ってない、お前の元婚約者にでも見てもらおうか」
挑発的に言い放ち、支倉さんに画像を見せようとした奥田さんの手元に飛びつく。
例えこれを奪ったところで、バックアップを取っているかもしれないとか、そんなことまでは考えていなかった。
ただ、反射的に身体が動いた。
奥田さんからスマホを奪って削除することしか、私の頭にはなかった。