恋愛境界線

駆け寄ってきた若宮課長が私の背中に手を添え、もう片方の手でギュッと手を握られた。


「馬鹿か君は!どうして、君はそう後先考えずに無茶をするんだ!」


どうやら、振り上げられたスマホが私の目元付近にクリーンヒットしたらしい。


左のこめかみ部分がズキズキと酷く痛んだ。


目を開けようとしたけれど、視界が霞んだまま、ぼやけて見える。


「だって……」


若宮課長は仕事も出来て、人望だって、社会的地位だってある。


何でも持っていて、何でも器用にこなしてしまう。私の手助けなんて必要のないほどに。


だから今回のことだって、私なんかが出しゃばらなくても、若宮課長だけで解決できたのかもしれない。よりスマートに。スムーズに。


課長にしてみれば、私のしたことは却って余計なことだったに違いない。


それでも、どうしてだろう。


今、目の前にいる若宮課長を見てたら、例えそうだとしても、私の力なんか必要としてなくても、それでも、課長の為に何かしたいと願ってしまう。


「だって、言ったじゃないですか……、今度は私が守るって」


私がこの人を守りたいって、強く思った。

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