恋愛境界線
まだぼやけて見える視界の真ん中にいる若宮課長に、ふにゃりと笑いかける。
「だからっ、君は馬鹿だと言うんだ……」
力なくそんな言葉を零した後、私を側にあった椅子に座らせると、若宮課長は落ちていたスマホを拾い、そのまま奥田さんに手渡した。
「言っておくが、手伝っていたのは姉の店で、金銭は一切受け取っていないから、社内規定には違反しない。それから、女装に関してもプライベートなことだし、社のイメージが下がると言われればそれまでだが、違反にはあたらないはずだ」
女装と言うワードに、支倉さんが側で聞いてるのに……と、私の方がハラハラしてしまう。
「けれど、その画像を使って私を脅した奥田の行為は立派な恐喝で、芹沢君を殴ったことに至っては暴行だ。判ってるのか?」
そっちこそ、社内規定どころの話じゃないだろと、若宮課長は落ち着いた声で、奥田さんへ言い詰める。
「は?お前に対して恐喝?あれはほんの冗談だろ?彼女のことだって、誤ってぶつかってしまったってだけで……大袈裟じゃないか」
「奥田くん!」
この期に及んでもまだ言い逃れをする奥田さんに、支倉さんが怒りを滲ませた声を上げた。