恋愛境界線
奥田さんへ詰め寄ろうとした支倉さんを若宮課長が制し、対照的に感情を全く見せない口調で語りかけた。
「それなら、それでいい。けれど、他社に我が社の情報を漏らした件については?不正競争防止法に抵触しているんだから、紛れもなくコンプライアンス違反だろう?」
今度は奥田さんに一言も喋らせる隙も与えず、「勿論、証拠もある」と告げる。
何も言い返せずにいる奥田さんを尻目に、支倉さんが私の側へと移動してきた。
「芹沢さんにはまんまと騙されたわ。最初から一人でどうにかするつもりだったのね?」
「すみません。でも、どうして私が今日ここに居ることが判ったんですか?」
そう訊ねると、支倉さんの代わりに若宮課長が答えてくれた。
「昨日の君の態度がおかしかったから、私が泉に心当たりがないか訊いたんだ」
最近、よく泉と一緒に居るみたいだったからと言われ、若宮課長の勘の良さと、目の付け所に舌を巻く。
「もしかしてと思って来てみたら、奥田くんと二人きりで居るんだもの。あのまま何かあったらどうするつもりだったの?」
支倉さんの少し怒った口調から、私のことを本気で心配してくれている様子が伝わってきた。