恋愛境界線
「もしかして、生き物じゃないだろうね?」と訊ねてくる課長に、「生き物とも言いますし、家族とも言います」と返す。
「……ちなみに、そいつの名前は?」
「ハムです。ハムハムでも、ハムちぃでも、お好きな様に呼んであげて下さい」
「名前がハムってことは、つまり――」
若宮課長に紹介しようと、ケージから取り出したハムを両手でそっと包み込む様に抱き、若宮課長の前に差し出す。
「うわぁぁぁあああ!」
いつもクールに澄ましている若宮課長から発せられたとは思えない、大きな悲鳴が室内に響き渡る。
「せ、芹沢くん、ハムスターじゃなくてネズミじゃないか!!!」
「え?はい。私、ハムがハムスターだなんて、一言も言ってませんよ?」
ハムは、薄茶色の毛並みをしたスナネズミだ。
「じゃあ、どうしてハムなんて、紛らわしい名前を付けるんだ!」