恋愛境界線
「芹沢君……君、無防備過ぎないか?」
「どういう意味です?」
もしかして、寝癖でもついていて、そんな格好を恥ずかしげもなく課長の前に晒していることを指しているんだろうか?
理解出来ていない私に、若宮課長は憐みの様な、疲れている様な――とにかく残念そうな眼差しを向けて寄越した。
これはやっぱり、ものすっごい寝癖でもついているのかもしれないと、焦って手櫛で必死に髪を撫でつけると、課長の目に浮かんでいた残念そうなそれは、より一層色濃くなった。
「とにかく、私はベッドに他人の気配があることが、基本的には許せない」
「それって、こんな大きなダブルベッドを買った人が言うセリフじゃないと思うんですけど……。誰かと一緒に寝る為に買っておきながら潔癖ぶるなんて……さては、むっつりですか?」
単純に疑問に思ったから訊いただけなのに、途端に「何!?」と険を帯びた声が返ってきた。
気の迷いと言わせた過去の思い出に抵触したからなのか、それともむっつりの方が癪に触ったのか。
「冗談です」と謝ったものの、課長の地雷は一体どちらなのかが、若干気になった。