廓の華

 蘇芳は、それを聞いてはっとした。

 火種はすでに仕掛けてある。彼女からの文だ。迷いなく火種に選んだ。俺は純粋な愛情を受け取っていい男じゃない。

 それに、俺以外の男が牡丹を囲うために用意した屋敷なんて、消し炭にしてやりたかった。

 ここに来る前に呉服屋に忍びこみ、牡丹に宛てて仕立てられた着物も全て切り刻んできた。これであの色狂いの計画は全て白紙だ。

 罪滅ぼしにもならないけれど、これが俺にできる全てだから。


「はぁ、はぁ」


 息も絶え絶えとなり、すがりつくように蘇芳の肩に手を伸ばした。

 彼の首元に顔をうずめると、まとめていた髪がはらりと解ける。頬に落ちた髪からあの子の香油が香った。


「……すまない、と……伝えてほしい」


 俺は幸せにできないから。

 彼女を殺めることもできないから。

 それだけ告げて、ずるりと畳に横たわる。やがて足音が去り、屋敷に火の手が上がった。仕掛けた火種よりも大きなものだ。

 やはり、あの男は甘い。恋敵の遺言を間に受けるなんて。

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