廓の華


 視界が赤一色で、自分の血なのか炎なのか、それすらもわからなくなる。

 血が抜ける感覚とともに指先が冷たくなって、命の終わりを悟った。


 ごめんね。

 ずっと隠し事をしていた。幸せにできないとわかっていて、甘い言葉をささやいてきたんだ。

 俺を雇ったのは島根屋の大旦那の妻で、旦那が入れ込んでいる遊女を殺してほしいとの依頼だった。

 わざと嫉妬深い大旦那の前で、妻との肉体的な関係を匂わせた。もちろん事実無根だが、地方へ出向く隙を見せれば、不倫の証拠を掴むために俺の自室をあさるだろうとふんだからだ。

 見つかりやすい引き出しの中に牡丹からの文を入れ、身請けに踏み切るきっかけをつくる。全てが計算通り。

 地方での仕事を終え、人を殺めた足で座敷に向かい、血で汚れた手で君を抱いた。

 本当の俺は、残忍で冷酷で、金のために依頼を淡々とこなす獣なんだよ。


 お願いだから俺の後は追わないで。

 俺の影を追いかけないで。

 業火に焼かれた人斬りなんて早く忘れて、真っ当に生きる男の隣で幸せになってほしい。


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