廓の華


 はじめはさっさと口説き落として遊郭からさらい、人目につかないところで殺すつもりだった。

 だが、花魁の仮面から覗く純粋で謙虚な一面に気づいて、欲望渦巻く花街で生きてきたとは思えないほど美しい心の持ち主だと知ったんだ。

 万華鏡を眺めていた無邪気な瞳で、綺麗なものだけ見ていて欲しい。

 そう願ううちに、君は人を殺める悪行に染まった俺の唯一の光になった。


 汚れなき肌に触れる気はなかったし、身勝手に命を奪う立場なのだから、女としてみないと決めていた。

 それでも情を抱いて手を伸ばしてしまったのは、俺の犯した最後の罪だ。


 聞いてくれ、牡丹。

 俺はこれまで一度も仕事に失敗したことはないんだ。全てが計算通りで、今回もうまくいくと信じて疑わなかった。


 でも、ひとつだけ誤算があったよ。

 それは蘇芳が俺を殺しにきたことじゃない。


 俺が、君を本気で愛してしまったことだ。









〜誤算〜・完
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