廓の華
形の良い二重の瞳が私を見つめた。どことなく真剣な表情にきょとんとすると、縹さんが勢いよく吹き出した。
「本当にこいつは不器用だ。女もまともに口説けない初心な男よ」
「あぁ、もううるさい。茶化すなら仕事に戻ってください。ほら、行きますよ」
縹さんの腕を力強く引っ張って立たせた蘇芳さんは、こちらに一礼して去っていく。
蘇芳さんの台詞が耳に残る。
三枚歯下駄で八文字を描くように歩けるまでになるだけでも大変だった。ひときわ目立つ華やかな花魁道中は、花魁としての格が現れるものだ。
それを忘れられないだなんて、どんな褒め言葉よりも嬉しかった。
『牡丹さん』
蘇芳さんの言葉が心を打ったのは、声のせいでもあるかもしれない。
少し掠れた、低くて甘い声。
そうだ。似ているんだ、あの人に。下心を見せずに穏やかな表情のまま酒を嗜む、久遠さまに似ている。
前に店に来たのは三日前だった。
今日、彼は来るだろうか。
また会えるのならば、もう少し久遠さまを知ってみたい。遊郭から出ることを許されない私は、彼の瞳を通して外の世界を見てみたい。
いつの日からか、私は謎多き彼が来るのを楽しみに待つようになっていた。