廓の華
目の前の彼に向けて、頭の中に質問が溢れる。
だが、口には出せなかった。私たちはあくまで遊女と客。お互いに深く踏み込むことはしないし、問いを投げかけても微笑でかわされることは多々ある。
「あぁ、夜は短いな。考えているうちにすぐ時が経ってしまう」
畳に手をついた彼は、覗き込むように首を傾げて誘った。
「飲もうか」
わかっている。期待はしないし、ひとりの客を特別な目で見ない。
差し出された盃に、酒を注いだ。
「はい。今夜も、色々なお話を聞かせてください」
いつもの距離、いつもの会話。どうせ、うわべだけの関係だ。
何かが始まるとしたら、この関係が終わるということ。私は、好きでもない男に身体を許さずとも幸せな時間を過ごせる今を噛み締めたい。
今までの客の誰とも違う久遠さまをもっと深く知りたくて、気持ちを教えて欲しくて、でも、分かってしまえば色褪せてしまうかもしれない……そんな儚い彼の背景に思いを馳せて、また、ひとりで眠った。