廓の華
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「久遠さま、これは?」

「万華鏡だよ。覗いてごらん」


 小さな黒い筒を覗くと、色とりどりの光が視界いっぱいに弾けた。初めて見る輝きに気持ちが高揚する。


「綺麗……こんな玩具があるなんて」

「面白いだろう? 回すと柄が変わるんだ」


 久遠さまは、かすみやを訪れるたびに土産を持ってくるようになった。かんざしや手鏡だったり西洋の菓子だったり、巷で噂の玩具だったりした。

 そのどれもが新鮮で、遊郭の外の世界を知れるのが素直に楽しい。


「子どもみたいにはしゃぐんだな」


 窓辺で頬杖をつく彼は、緩やかに目を細めている。


「ごめんなさい。私、ひとりで」

「いいよ。すましているより、そうやって無邪気に笑っているほうが好きだ」


 ひんやりとした夜風に、艶やかな黒髪がなびいている。薄い羽織りを肩にかけた彼は満足げにこちらを見つめた。

 初めて指名された夜よりも、ふたりの心の距離は縮まったように感じる。

 週に三回、決まった曜日に来る彼は、遊郭に通う習慣がついたと言った。


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