廓の華

 相変わらず、久遠さまは自分について多くを語ろうとしないが、だんだん表情が自然になった気がする。

 もちろん、一線を越えた夜はない。


「牡丹。しばらく、仕事が立て込んで来れなくなる」


 ふと耳に届いた台詞に、万華鏡を回す手が止まった。

 驚いて視線を向けると、穏やかな表情が目に映る。


「お仕事ですか?」

「あぁ。地方に行く」


 彼が仕事の話をするのは初めてだった。

 これまで、土産物は珍しい品や外国の食べ物が多く、彼の仕事は外商とも交流がある問屋ではないかと見当をつけていた。問屋を営む馴染み客が、大儲けしたと自慢していたこともあった。

 地方に取り引き先があるとすれば、その仮説にも繋がるだろう。

 高頻度で遊郭に通ってもお金が尽きない様子を見ると、名のある両替商という線もある。


「どのくらい地方に行かれるんですか?」

「それは仕事の進み具合で変わるから、なんとも言えない。次の満月の日には来れるように努めるよ」

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