廓の華


 次の満月は、ほぼ一ヶ月後だ。今まで頻繁に来ていただけに、今日を最後に当分会えなくなると思うと、少し気分が沈む。

 最近は、他の客の相手をしても仕事に身が入らなかった。さすがに顔に出したり、接待に気を抜いたりはしないけれど、他の男性の顔を見ても久遠さまの姿を思い浮かべてしまうのだ。

 彼なら、こんな下品な話はしない。下心だけで迫ることも、荒く抱くこともない。そんなふうに、無意識に他の客と久遠さまを比べている自分がいる。

 その時、低く甘い声がした。


「牡丹」


 顔を上げると、差し出されたのは薄い箱型の紅箱だった。中を開くと美しい玉虫色の面が現れる。

 驚きのあまり、言葉が出ない。

 玉虫色の紅は、同じ重さの金に匹敵するほどの高級品だ。そうそうお目にかかれない代物に絶句していると、柔らかな声が耳に届く。


「次に会う時は、この紅をひいてきてくれ」

「こんな素敵なもの、良いのですか。これまでも贈り物をいくつもいただいているのに。私にはもったいないです」

「君に相応しい品を選んだんだよ。牡丹だからこそ贈るんだ」


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