廓の華


 嬉しさと戸惑いがせめぎ合う。

 だが、なによりも久遠さまの気持ちに胸を打たれた。


『気に入った女を自分好みに仕立て上げるのは、この世で一番の娯楽かもしれない』


 彼が、私に相応しいと言ってくれている。この紅で、美しくなってほしいと思っているの?

 そう思った瞬間、心が震える。私に興味を全く示さない彼が女として見てくれたようで、むず痒い嬉しさが込み上げた。

 少しずつ久遠さまにもらった品が増えていくたびに、彼を思い出す時間も多くなっていく。

 いつのまにか、心が囚われていくのだ。


「ありがとうございます。大切に、大切に使います」

「気に入ってくれてよかった。万華鏡の方が喜ばれたら、どうしようかと思っていた」

「どちらも嬉しいですが、この紅は特別な品です」


 触れるのもためらわれる高級品が手の中に収まった。とても小さな箱なのに、信じられないほど重く感じる。

 紅板の繊細な装飾に惚れ惚れしていると、頭上から声が聞こえた。


「紅筆はあるか?」


 今、つけて欲しいという意味だろうか。

 使用人に化粧道具を頼むと、黒く細い筆が届けられた。彼に以前もらった手鏡で整えようとしたが、筆をとったのは久遠さまである。

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