廓の華
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「あの格好いいお客さま、最近見ませんね」


 昼間、面倒をみている禿を連れて遊郭の中にある茶屋で菓子をつまんでいると、ぽつりとそんな声が聞こえた。

 禿が指しているのは久遠さまのことだ。頻繁に彼にもらった玩具が増えていたのに、それが急にぱたりと無くなったので気がついたのだろう。


「色々な事情があるんでしょう。ここはあくまで娯楽の場だから。お仕事に余裕がなければ来なくて当然よ」


 そうたしなめたが、私自身が一番気にかけていた。

 久遠さまは初めて口づけを交わした日から、もうひと月以上も来ていない。以前は仕事が忙しくなる前にちゃんと伝えてくれたが、最後に会ったときにはなにも言われなかった。

 こんなにも会えないのは初めてだ。

 彼がどこに住み、昼間なにをしているのかわからないが、こちらから「来てほしい」と連絡を取る手段もない。

 指名が来るたびに、無意識のうちに久遠さまの影を探してしまう自分が嫌になる。


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