廓の華
突然会えなくなると、余計に気になった。押してダメなら引いてみろ、とはよく言ったものだ。
もちろん、彼が私に意識させようとして遊郭に来ないわけではないだろう。
だが、久遠さまは駆け引きが上手い。
少し仲良くなれたと思ったらすぐに姿を消し、一定の期間が過ぎた頃にふらりと現れて再会の熱に溺れる羽目になる。
そして、会えない間も彼が私に贈った品が部屋中に溢れているため、忘れる隙を与えないのだ。
私は、いまだに初めての口づけを反芻して胸を高鳴らせてしまうのに、きっとあの人は遊郭以外で私を思い出すときはないと想像がつくのが寂しい。
すると、手元の団子を見つめて考え込んでいた時、聞き覚えのある声が耳に届く。
「牡丹さん」
少し掠れた低く甘い声。波を立てないように水面を滑る風のような、温かくて優しい口調。
姿を消した彼が頭をよぎり、勢いよく顔を上げると、視界に映ったのは目を見開く蘇芳さんであった。
「驚かせてしまってすみません、急に声をかけたのは良くなかったですね」
「いや、こちらこそごめんなさい。……ちょうど知り合いのことを考えていて、声が似ていたものだから」