廓の華
蘇芳さんの口から久遠さまの近況を聞くとは思わなかった。京の都までは、移動だけで十五日前後かかる。ひと月姿を見せない理由がようやくわかった。
まだ、当分会えないのかしら。
「会いたいですか? 久遠さんに」
心を見透かされた問いだった。
禿は、おかっぱ髪を揺らしながらふたりの顔を見比べている。
「えぇ。大切なお客さまだもの」
「お客、ですか」
建前に気付いてるようだったが、蘇芳さんはそれ以上なにも追求しなかった。
「まぁ、簡単には会えないほうが再会できたときの喜びがひとしおでしょうし、久遠さんは必ずまた来てくれますよ」
「わ、私は期待しているわけじゃ」
「はは。そういうことにしておきます」
茶屋ののれんをくぐった蘇芳は、中で屯所に持ち帰る茶菓子を買い、去っていく。
彼は、おそらく久遠さまへの私の気持ちを察しているのだろう。私は、そんなにわかりやすいの?
「あ、牡丹さま。そろそろ戻らないといけないのではありませんか」