廓の華
**


「牡丹さま。少しでも食べないと体が持ちませんよ」

「そうよね。わかっているんだけど、箸が進まないの」


 座敷に出なくなって三日。縹さんに診察をしてもらったが、病ではないらしい。体調は戻ったものの、気分は沈んだままだった。

 そろそろ復帰しなければ、私がかすみやにいる意味がなくなる。借金が返せないなんて、あってはならない。

 今夜こそ、花魁に戻るんだ。


「牡丹、やっぱり今日までは休んだらどうだい? 今までが働きすぎだったんだ。お前は禿の面倒見も良くて、かすみやのためによくやってくれるし、少しは大目に見るよ」


 厳しく残酷な世界といえど、かすみやの番頭は温情があった。花魁にのし上がるまでの苦しみを知っているだけに、気にかけてくれているらしい。


「いいえ。今夜は座敷にあがります。指名はどなたですか?」


 気を引き締めて笑ってみせた。

 すると、番頭は小さく息を吐いて笑い返した。


「紅を引いて、今夜こそ座敷で落としてきな。例の二枚目だ」


< 48 / 107 >

この作品をシェア

pagetop