廓の華
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 揚屋に着いて、彼の背中を探す。花魁道中から心臓が早鐘を打っていた。

 いつもの騒がしい座敷となにも変わらないのに、久遠さまがいると思うだけで世界が明るく色づいて見える。

 やがて、番頭がひとりの客を連れてきた。待ち望んでいた彼の凛々しい顔を見て、さらに体が熱くなる。


「牡丹」


 低くて甘い響き。脳まで直接届く、穏やかな久遠さまの声だ。

 彼は、微笑を浮かべてそこにいる。

 やっと会えた。


「久しぶりだな。しばらく体調を崩していたと聞いたけど、大丈夫なのか?」

「はい。久遠さまのお顔を見たら、良くなりました」

「ははっ。相変わらず俺の気を引くのが上手だね」


 本心なのに。

 花魁の接待だと思われるのがもどかしかったが、気持ちが浮かれて、ただぎこちなく笑うことしかできない。


「行こう」


 かすみやに向かい座敷に上がって襖を閉めると、そこは完全にふたりきりの空間だった。

 それはひと月前までは当たり前の光景だったのに、長く待ち望んだ後の再会は想像以上に落ち着かない。

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