廓の華
質の良い黒い着物を着こなす彼が、やけに色っぽく感じる。襟から覗く鎖骨も、喉仏も、形の良い薄い唇も直視できない。ちゃんと男性として意識してから、会うのは初めてだ。
濡れたような黒髪をひとつに結わえているのは変わらないが、少し髪が伸びた気がした。
「牡丹、なんだか緊張しているだろ?」
「久遠さまとこうやってお話しするのが久しぶりなので」
「そうだね。俺も少し緊張するよ。会いたかった」
会いたかったの言葉ひとつで舞い上がってしまう。
きっと、彼よりもずっと私の方が会いたかった。ふたりでお酒を飲んで、他愛のない話をして、名前を呼んで欲しかった。
あの夜の口づけが忘れられない。
「体調は本当に平気か?」
「はい。もうすっかり。……久遠さまの顔を見るまでは、あまり眠れない日が続いていて辛かったんです。でも、会えて本当に嬉しい。今なら、お酒も飲めそうです」
「良くなったならよかった。無理はするな。辛くなったら言ってほしい」