廓の華
突然の話に頭が真っ白になった。
彼は以前から私に執着する素振りを見せて、着物を仕立てたり妻に隠れて逢瀬できる場を用意したりすると言っていた。夢物語だと思っていたのに、本気だったの?
戸惑いながら尋ねる。
「驚きました。なぜ、急に話を進めたのです? 前にいらした時にはなにもおっしゃっていなかったのに」
「私が事業に明け暮れて目を離しているうちに、お前に悪い虫がついているようだからね」
大旦那は懐からあるものを取り出した。差し出されたのは見覚えのある字が並んだ紙だ。
それは久遠さまに送ったはずの文である。明らかに自分の筆跡であり、偽物ではない。
どうして、この人がこれを?
「これは私の屋敷の使用人の部屋から見つかったものだ。お前があの男に渡した文だろう?」
雷に打たれたような衝撃が走った。
まさか、久遠さまが雇われていたのは島根屋の大旦那の屋敷だったなんて。彼はそれを知らなかったのだろうか。基本的に他の客の話はしないため、久遠さまの前で島根屋の大旦那の話題は口にしていない。
指名が被ったのは運命の悪戯か。
こちらの態度に確信を得たのか、大旦那は不機嫌そうに歯軋りをして続ける。