廓の華
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「本当にこの話を受けていいのかい? ここで働いてもいいんだぞ?」

「いいんです。今後一生、他に身請けを申し出る客はいないでしょうから」


 かすみやの楼主と話をつけ、身請けがまとまった。こちらの意思を尊重しようとしてくれたが、財力が安定しており、ここを出ても不自由ない生活を送れると判断した楼主は身請け先としては十分だという意見だった。

 もちろん、私の言葉が真実でもある。本来は身請けされるのが滅多にないことだ。声がかかっただけ幸福なのだろう。

 脳裏をよぎったのは、以前身請けを断りこっぴどく振ったお菊の姿だった。結局、情男とはどうなったんだろう。あれから姿が見えない。

 足抜けしたのか? 彼女は幸せなのかな。

 楼主と話がついてから花街の賑やかな空気から遠ざかり、自室にこもった。身請けが決まった時点で抱える借金は島根屋によって支払われており、他の客をとる必要がなくなったのだ。

 それ以上に、身請けを申し出た客に操をたてろと言わんばかりの圧力があった。

 私はあの男のものになる。言葉の通り、〝もの〟だ。楽しくもないときに笑い、一生死ぬまで接待し続ける。愛をくれる人と結ばれるのは幸せなのかもしれないが、大旦那には妻がいる。

 所詮、私は愛人だ。

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