廓の華
身請けは来週だと聞いた。遅いとも早いとも思わない。私物の整理やお世話になった人に挨拶をする時間があれば十分である。
この地獄に居られる七日の間に、何度も久遠さまからもらった文を読み返すことだけは決めていた。
そして、あっという間に時が過ぎ、身請けの前日となった。店に出ることがなくなっても、他の遊女や禿たちから花街の様子は耳に入っている。
島根屋の大旦那は宣言通り揚屋の番頭に久遠さまを通さないよう伝えたようで、それを知ってか知らでか、彼は一度も店を訪れていないらしい。
その根回しが無くても、無職になってしまった今、もうこの町を去ったのだろうか。
最後に一度は会えるのではないかと淡い期待を抱くのはやめた。朝が来て夢から覚めるたびに悲しくなるし、現実味のない希望にすがる自分が惨めで仕方がなかったからだ。
机の上に彼からもらった文を並べた。やりとりは数枚だが、どんなものより価値があるように思える。