廓の華
久遠さまは、初めて指名をした日から数日おきに店を訪れるようになった。ご祝儀もしっかりと納め、私の馴染み客となったのだ。
馴染み金を払えば、他の妓楼の遊女には会えなくなる。
正直、そこまで気に入られた自覚はない。彼は涼しい顔をして大金を落としていくが、素性も職業もなにひとつ口にしないうえに、愛の言葉をささやいたりもしないからだ。
久遠さまはいつも落ち着いていて、口調も穏やかだ。所作は優雅であるが、自分は裕福な出ではないと言っていた。生きる中で身についた処世術らしい。
毎回、他愛のない話をして、かすみやに来る客について聞いてきたりする。好奇心旺盛な性格らしいが、私というよりも遊郭そのものに興味を持っているように思えた。
「女に興味がない男なんて、俺はひとりしか知らないな。……あぁ、噂をすれば、あいつだ」
縹さんは、一軒先の影に手を振る。
「おーい、蘇芳!」