廓の華

 こちらを見下ろす彼は、獲物を目の前にした獰猛な獣みたい。

 よく知る穏やかな優男とは違う一面に、心臓が早鐘を打ち始める。


「久遠さま、その格好は?」

「遊女として紛れ込んだんだ。こうでもしないと、かすみやに来れなかったから」

「どうして私の部屋がわかったんですか?」

「親切な小さな女の子が教えてくれたよ。牡丹が自室に閉じこもっていることを心配していた」


 禿が案内をしてくれたらしい。

 それにしても、出入りを禁じられたからといって遊女に化けるとは予想外だった。その完成度は高く、歌舞伎の女形と言われても通じるほどだ。


「はじめは店の新入りだと勘違いして気が付きませんでした」

「ははっ。喜んでいいのか複雑だな。客、とれそうか?」

「ないと言い切れないのが怖いくらいです。ほとんどの方が騙されるかもしれません。近くで見ても、本当に綺麗」

「ううん、落ち着かないから化粧を落としていいか?」


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