【コミカライズ】皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―


「どうした?」


そっと出窓から一歩引いた私に、ルイナードは不思議そうに小首をかしげる。


「⋯⋯あなたは、花が嫌いなのかと思っていたわ」


意を決して、真っ向から見つめると、彼はこれから私が言わんとすることを察したようだ。

切れ長の瞳を縁取る、扇のような睫毛を揺らし。数秒の間をおいてから、諦めたように吐息とともに口を開く。


「⋯⋯今宵は嵐になると聞いたから、夕刻頃に摘んできただけだ。俺の皇妃は、花を愛でているときが、一番幸せそうな顔をしているからな」

「⋯⋯っ」


予想以上の口説き文句に、驚き固まってしまった。

しかし、彼は小さな顔に嵌め込まれた瞳を少しだけ困ったように伏せると、重そうな足を動かしベッドに腰を下ろした。


「俺に聞きたいことがあるんだろう? 答えてやるから、聞いてみろ」


まさか、彼の方から降ってくるとは思わず、ハッとした。向けられるのは、呆れたような面差し。

それでも、願っていた機会に心臓が暴れ出す。


「――もう、逃げないのね」

「⋯⋯逃げてはいたわけではない」

「逃げてたわ」


言いきって、そして私はぶつけた。

< 210 / 305 >

この作品をシェア

pagetop