【コミカライズ】皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―
「どうした?」
そっと出窓から一歩引いた私に、ルイナードは不思議そうに小首をかしげる。
「⋯⋯あなたは、花が嫌いなのかと思っていたわ」
意を決して、真っ向から見つめると、彼はこれから私が言わんとすることを察したようだ。
切れ長の瞳を縁取る、扇のような睫毛を揺らし。数秒の間をおいてから、諦めたように吐息とともに口を開く。
「⋯⋯今宵は嵐になると聞いたから、夕刻頃に摘んできただけだ。俺の皇妃は、花を愛でているときが、一番幸せそうな顔をしているからな」
「⋯⋯っ」
予想以上の口説き文句に、驚き固まってしまった。
しかし、彼は小さな顔に嵌め込まれた瞳を少しだけ困ったように伏せると、重そうな足を動かしベッドに腰を下ろした。
「俺に聞きたいことがあるんだろう? 答えてやるから、聞いてみろ」
まさか、彼の方から降ってくるとは思わず、ハッとした。向けられるのは、呆れたような面差し。
それでも、願っていた機会に心臓が暴れ出す。
「――もう、逃げないのね」
「⋯⋯逃げてはいたわけではない」
「逃げてたわ」
言いきって、そして私はぶつけた。