皇帝陛下、今宵あなたを殺害いたします―復讐するのに溺愛しないでください―【コミカライズ原作】
――産まれる。
そう確信した瞬間、考えるまもなく、サッと足をすくわれるように抱きあげられた。
「おい! ハリス! ハリスはどこだ!」
ええ?! こんな大勢の前てお姫様抱っこなんて、ちょっと待ってよ⋯⋯!!
あまりの驚きに、痛みがとんでいってしまいそうだった。心なしか会場もギギョッと、どよめいた気がする。
「ちょ、ちょっと、ルイナード落ちつ――」
「落ち着いていられるわけがないだろう」
なんて珍しく慌てるルイナードをなだめるのも束の間。
「こちらです! 陛下、早く医務室のほうへ!」
正装のハリス先生が参列席から飛び出し、私が入ってきた扉へと手招きをする。ルイナードは私を抱きかかえたまま、弾かれたように走り出す。
えぇ、ちょっと待って。まだ、自分で歩けるのに!
そして、瞬間にして沸き立つ参列席。
まぁ、この状況を見れば言わずもがな。これからこの国の跡継ぎが誕生することを察したのだろう。
にしても、こんなに騒がれちゃ恥ずかしすぎる⋯⋯っ。
もちろん「降ろしてぇ――」という私の叫びなど誰にも聞こえてはいないわけで。
声援と祝福と歓喜の渦と――
「わぁ、みなさんご静粛にーー!」
慌てたクロードさんが、会場をなだめる声が扉の閉まる直前に飛び込んできた。