秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「もちろん。それに、俺も三人で出かけたいと思ってたんだ」

 私たちと? 人に見られたら、家族だって誤解されてしまうかもしれないのに……。

 戸惑う私をよそに、相良さんは「天音は行きたくない?」とこちらに迫った。慌てて否定すると、相良さんは「じゃあ決まり」と私の頭をぽん、と優しく叩く。

「……ありがとうございます。恵麻も、すごく喜んでました」

「俺も楽しみだよ」

 目尻を垂らす相良さんに、私は間違いなく真っ赤に染まっているであろう顔を見られたくなくてうつむいた。

 しかし、「天音」と私を呼ぶ彼に手首を掴んで引き寄せられる。驚く間もなく、頬に柔らかく、温かな感触が伝わってきた。

「おやすみ」

 相良さんが耳に触れるようにささやく。鼓膜にじんわりと響いて、私は飛び退けつつも勢いよく手で耳を覆った。
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