秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 会話をしながら歩いていた男性のひとりが、私の存在に気づきふとこちらに視線を移す。視線がぶつかり、男性の姿を認識した私は驚いて大きく目を見開いた。

 あの人が、どうしてここに……?

 鼓動がドクンと張り詰めてくるのを感じる。

「君は――」

 驚きの表情を浮かべた男性がそう発したのが聞こえてきて、私は彼らに背を向けてその場から走り出した。

「待って」と男性のやや語尾が高ぶった声が背中に刺さる。

 近くにあった階段へ駆け込み急いで駆け下りるが、私より歩幅の大きな靴音がすぐそばまで迫っていた。私が踊り場を回りさらに下の階へと向かっていたそのとき、腕を引かれ、私はバランスを崩してうしろへ倒れ込む。

 男性に支えられ、倒れることはなかった。男性はすぐに私の肩を掴み、自分のほうへ振り向かせる。

 見覚えのある、まつ毛の長い二重まぶたの大きな目が私を捉えた。
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