秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
天音(あまね)……?」

 あの日のように私の名前を口にする男性に、胸が痛いくらいに締めつけられた。その低く心地よい声を身体が覚えていたのだと実感させられる。

「……相良(さがら)さん」

 私が諦めてつぶやくと、相良さんは悲しげに顔をゆがめた。

 軽くセットされた艶のあるさらさらとした黒髪。日本人離れした高い鼻には綺麗に筋が通っていて、引き締まった口もとが美しい。

 その姿は四年前とほとんど変わっていなかったけれど、幾分か年齢を重ねた分、あの頃より大人の雰囲気が増してさらに魅力的な男性になっているように見えた。

「本当に天音なんだな。逃げたってことは俺のこと覚えてるんだよね」

 その問いかけに、私は悩みながらもゆっくりとうなずく。

 忘れられるわけない。

 すると、頭の上から相良さんが大きく息を吐くのが聞こえてきた。私は思わずビクッとする。

 次の瞬間。
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