秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「あの日、いなくなったのは相良さんのほうじゃ……」

 狼狽して発した私に、今度は相良さんが「えっ?」と驚きに打たれたように絶句する。私は心が波立ち、不安に掻き立てられた。

「私が起きたら相良さんの姿はなくて……」

「いなくなったのは君のほうだろ? 俺は起きて君が寝ている間にホテル内の施設へ着替えや必要そうなものを買いに出ていたんだけど、戻ったら部屋に君はいなかった」

 相良さんは、焦燥を隠しきれない口調で言う。

 ……まさか私、相良さんが買い物に行ってくれている間に目を覚まして、置いていかれたって勘違いしていたの?

 私が混乱する頭の中を必死で整理していると、相良さんがふーっと長い息を吐くのが耳に届いてきた。大きく項垂れた彼が、おもむろに顔を上げる。

「サイドテーブルの上に『すぐ戻るから待ってて』ってメモも残したのに消えていたから、てっきり俺は君に振られたとばっかり……」

「メモ?」

 知らない事実に、私はひどく動揺した。
< 132 / 213 >

この作品をシェア

pagetop