秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 これ、本当に私が紛れ込んでいても大丈夫なパーティーなんだよね? そもそも恋人も高校生のときにひとりいただけの私に、男性とお近づきになれなんて無理難題もいいところだ。

 奈保美は、『最悪料理だけでも楽しんできてよ。あのホテルの料理本当に評判いいから』と言っていたけれど、あの人波に紛れ、料理を取れる気がしない。

 ……奈保美には悪いけれど、少ししたら帰ろう。

 そう決断し、小さく息をついた私の視界に突如グラスが現れた。

「はい」

 驚いた私が声のするほうへ顔を上げると、ネイビーのスリーピーススーツを身に纏った男性がこちらにグラスを差し出していた。

 私に? と戸惑いつつも、まわりに自分以外の姿がないのを確認し、おそるおそる受け取る。

「あ、ありがとうございます」

 シャンパングラスのような細長いグラスの中には透明な液体が入っていて、パチパチと気泡が破裂している。

 お酒かな?

「大丈夫。ただの炭酸水だよ」

 心配する私の考えを読んだように男性が言う。よく見ると男性はもう片方の手にも同じグラスを持っていた。私は気恥ずかしくて、グラスに口をつけて炭酸水をひと口飲む。乾いていた喉に炭酸が弾けた。
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