秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 いつか結婚の挨拶をするとき、相良さんのご両親に反対されても仕方がないとさえ思っていたのに。

「……社長のお気持ちだけで十分です。私と娘を気遣っていただきありがとうございます」

 私も感謝を込めて頭を下げる。顔を上げると、相良さんのお父様は目じりを優しく垂らしながらも、少し悲しげに微笑んでいた。

「この場で申し上げられるような立場ではありませんが、天音さんと恵麻ちゃんさえよければ、いつかうちにも遊びにきてください。家内もあなたたちに会いたがっています」

 相良さんのお父様が言う。私が当惑して相良さんに視線をそそぐと、彼も穏やかな面持ちでうなずいた。

「……娘には祖父がいませんでした。きっと、はじめておじいちゃんができたと喜ぶと思います。必ず改めてご挨拶にお伺いします」

 私の言葉に、相良さんのお父様は一段と柔らかな声色で「ありがとう」と告げた。

 この人はやはり相良さんお父様なんだな。このお父様の背中を見て育ったから、相良さんも優しく、人を思いやれる素敵な人に育ったのだと思えた。

 父親という存在を知らなかった私は、はじめて身近に父の背中の大きさを知った。
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