秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 私は眉尻を下げて「相良さん……」と訴える。

「大和って呼んでくれたら解放する」

 大和? 名前で呼べということ?

 思いもよらぬ要求に、私は耳まで一気に熱が上るのがわかった。

「ずっと相良さんって呼んでいたので、いきなりそう言われても恥ずかしいです」

「君もそのうち相良になるんだろう。ほら」

 まったく諦める気配のない相良さんが、いたずらっ子のような表情で小首を傾げて私を待つ。私はいたたまれなくなってしばらく狼狽してから、視線だけで相良さんを見上げた。

「……や、大和さん?」

 恐る恐る口にすると、大和さんはなぜか一瞬目を見張ってから、子供のように無邪気な笑顔を浮かべた。

 名前を呼ぶだけでこんなに喜んでくれるなんて。

 込み上げてくる想いに息が詰まる。

 深い愛情で包んでくれている彼が、私も愛おしくて堪らなかった。
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