秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「桐斗。お前だな」

「ごめん」

 大和さんと桐斗さんのやり取りに、泉さんは声を立てて笑っていた。しかし、私は明かされた事実に驚きを隠せないでいた。

 以前大和さんが、『あのあともどんなに捜しても見つからなくて』と言っていたけれど、根回しまでされていたなんて……。大和さんは言わなかったから知らなかった。

 動揺を隠せない私を見た大和さんが、決まりの悪い面持ちになる。そんな私たちを、泉さんは座卓に頬杖をついて笑顔で見つめていた。

 大和さんは泉さんに弱いんだな。変な反応をしていたのはこのせいだったのか。

 完璧な大和さんの意外な弱点に、私は思わずくすりと笑みを溢れさせる。私の笑い声を聞いた大和さんは、さらに大きくため息をついていた。

 こんな大和さんははじめて見るし、ここまで誰かと砕けた口調で話しているところだって今までに見た覚えがない。

 まだ来たばかりなのに、すでに大和さんの知らなかった一面をいくつも目にした私は新鮮な喜びを感じていた。
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