秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 ゲストルームを出て相良さんの少し離れたうしろを歩く私を、彼はソファーの隣に立って待っていた。

 緊張がピークに達していて息苦しい。これからどうなるのだろう。しかし、それよりも、この部屋に入った瞬間からある違和感が私の頭をもたげていた。

 私は待っている彼のもとへと向かいながら、物静かな空間にできるだけ神経を研ぎ澄ませる。

 ……人の気配がしない。

 お子さんは当然眠っている時間だろう。奥様も一緒に眠っているだけかもしれない。だが、それだけでなかった。

 車にチャイルドシートはあったのに、二十畳は悠にあるように思えるこの広いリビングの中には、子供や女性が暮らしている形跡事態が微塵もないのだ。

 家具やインテリアも大人の男性が好みそうなシックなデザインのものでまとめられていて、子供や家族がいればおのずと滲み出てしまう生活感がまるで感じられない。

 考えすぎかな。ここは私の住んでいるハイツとは収納や機能なども比べものにならないほど多いだろうから、すべて完璧に片付けられているだけなのかも。

 相良さんのもとへたどりつくと、彼は再び私の肩を軽く掴んでソファーに座らせた。
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