秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「ダメです。相良さんにそこまでしてもらうわけには……」

「ちょうどお手伝いさんが辞めて困ってたんだ。君が住み込みで、仕事から帰って夕食や簡単な家事をしてくれると俺も助かるんだけど」

 住み込みで家事を?

 そりゃ……保険で対応してもらえるといっても、一ヶ月以上ホテルで生活するお金をまずは立て替える必要がある。加えて新しい家も探さないといけないし、その間もお母さんの入院費は払わないといけない。正直金銭面には不安があった。

 泊まるところができるならとても助かる。そうだとしても、さすがに相良さんの家でお世話になるわけにはいかない。

「恵麻ちゃんもいるならホテルより安心だ。次の家を探すまでの間でもいい。俺を助けると思って甘えてくれないか?」

 私は葛藤する。すると、単調なメロディーと給湯器のアナウンスが私たちの間の沈黙を破った。

「お湯も溜まったみたいだ。恵麻ちゃんも寝てるし、今からホテルに行くより今日はうちに泊まったほうがいい。身体も冷えてるだろうから、とりあえずゆっくり温まっておいで」

 私が未だ「でも……」と思い悩んでいると、相良さんは「いいから」となかなか首を縦に振らない私の背中を押してバスルームへと連れていく。
< 61 / 213 >

この作品をシェア

pagetop