秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
「さっきエントランスで副社長を見かけちゃった。花里さんはうちの副社長見たことある? すごく素敵な人なのよ」

 栗林さんの言葉に、どきりと心臓の鼓動が大きくなった。

「……実は昨日、偶然廊下でちらっとお見かけしました」

 私の返答に、栗林さんが「おっ、そうなんだ」と嬉しそうに口もとのストールをずらす。

「総務にいると重役のいる上層階に行く機会なんてそうないから私もさっき久しぶりに見かけたんだけど、今日もかっこよかったわ……。あの顔に一流大学卒の御曹司で、ゆくゆくはグループの社長。まだ三十一歳で、その上子供好きだし。あれだけハイスペックでまだ結婚してないなんてもはや罪ね」

 そう言うと、栗林さんはうっとりと遠くを眺めていた。

 結婚していないって社内では有名だったんだ。それなのに私ったらあんな勘違いをして。相良さんに笑われても仕方がないな。
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