秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない
 私は皆に挨拶をしながらも、先ほど聞いた話に思考を奪われていた。

 あの夜、置いていかれた私が相良さんの忘れられない人なわけない。……やはりあのとき伝えなくてよかった。恵麻があなたの娘ですと話していたら、絶対に困らせていた。

 好きな人にあなたとの子供ができたと言い、そんな表情をされるなんて耐えられない。

 結局、私の思い違いだったんだな。ハイツでの問題が片づいたら、早く新しい住むところを探さないと。

 脱いだコートをたたみ、デスクの上に置く。私は込み上げる悲しみをごまかすように、自分の両頬を手で軽く叩いた。
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