秘密の子育てだったのに、極上御曹司の溺愛から逃れられない

『ポピーウィズ株式会社』では、入社して三か月は研修期間で、仕事を覚えるために総務部で先輩社員たちの補佐役を行う。のちに適切な部署を判断され、正式に配置されるらしい。

　研修期間、栗林さんは私の教育を担当してくれる。

　この前少し話したときには、二十六歳の私よりちょうど十歳年上だと言っていた。

『私も子供が四歳の頃からここで働き出したの。小さな子がいる女性社員も多いからなにかあったら遠慮なく言ってね』とも。

　そのときの栗林さんの優しい気遣いにひどく安堵したのを覚えている。

「本日からよろしくお願いします」

「こちらこそ。とりあえず今いるメンバーに挨拶したら、今日はまず社内を案内するから。資料室や他部署の場所、行く機会の多い場所だけでも覚えて帰ってね」

　私が「はい」と答えると、栗林さんは「よし。頑張ろう」とそっと肩を叩いてくれる。

　用意されたデスクに荷物を置いた私は、気合を入れ直すようにひとり小さく息を吐いた。