初恋交響楽
この日、わたしは『エンペラーホテル』の中にあるカフェで目の前の男と"お見合い”と言うものをしていた。

成人式の時に着た赤い着物姿のわたしは、
「そうだね」
と、男ーー大国巡（ｵｵｸﾆﾒｸﾞﾙ）くんに返事をした。

「１０年ぶりだよね？」

そう言った大国くんに、
「最後に会ったのは、中学校の卒業式だったからね」

わたしは言い返した。

「もうそんなにも経ったのか…」
と、大国くんはしみじみとした様子で呟いた。

そうですね、もうそんなにも経ちましたね。

その間に結婚でもしてくれてたらよかったのに…と、わたしは心の中で呟いた。

「わたし、知らなかったな。

まさかお見合いの相手が老舗百貨店『成田屋』の副社長で、その副社長が大国くんだったなんて」

父親から名前を聞かされた時は同姓同名であれと、心の底から願いましたよ。
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