【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ
そこで白羽の矢が立ったのが西のリグウォン家だった。この国で王都を凌ぐとまで言われている圧倒的な軍事力を持つのは、東のメアロード領。しかしその領主、グレン・メアロードこそ、王家に撃たれた当事者である。声をかけられるはずもない。
そしてそれ以前にグレン・メアロードは王家からの婚約の打診を一方的に棄却し続け、次に婚約の話をしたら遠くの国へ行くか城を燃やすと王の御前で伝えた話は、シルウィンの住む最西端の領地に届くほどに有名な話であった。そしてそんなメアロード領の当主は、とうとう結婚をしたとここ最近発表された。相手は侍女で、夫婦仲は良好。王家の入り込む隙はなかった。
次に挙げられるのは、この国の最南端、そして宰相であるダリウス・シャイルリードの故郷、シャイルリード領だ。けれどここは年相応の人間が、それこそ一年以内に婚儀を挙げても不自然にはならないような男女はおらず、断念された。次に最北端の領地を司る家も、同じだった。
そういった事情が絡み、言ってしまえば元は予定されていなかった婚約。辺境の当主の娘との婚姻に選ばれたのは、王家と近いだけの政治参加はさせてもらえず、伝統だけをただただ引き延ばしたような公爵家、ディルセオン家である。