【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ

 シルウィンはそれから、嘘が暴ける能力を使って社会に役立て正義のために戦おう。誰かの役に立てよう。そう思うことはなかった。嘘が見えるといっても、相手が今本当のことを言ってるか嘘を吐いているか分かるだけ。そして、相手の嘘を見抜けたとしても、相手が嘘を吐いている証拠を見つけなくてはいけない。シルウィンはそう考えた。

 よってシルウィンは、その能力を自分のために使い、他人のために使うことは一切しないようにした。他人の人生になんて責任が取れない。自分のために使わなければ、自身はこの能力によって人が毎日パーティーをしているように見えるだけ。そんなのは、自分がただ苦しいだけ。だから私はこの能力を自分のためだけに使って、自分が幸せになる礎にするのだ。そう決意を胸にして。

 そして今日の夜会も、気に入った令息がいればあれこれ質問をして、その嘘を暴き、真実を見極めながら自分に相応しい相手を見定めようと、シルウィンは強い意気込みをもって夜会に参加したのだ。しかし、今シルウィンが脱力し、ため息を吐きながら蝶の羽ばたきを眺めているのは、他でもない、ただ一つの理由である。

(私に相応しい男がいない……)
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