【完結】嘘つき騎士様と嫌われシンデレラ
ではシルウィンの高い理想とは何なのか。
それは自分と同等、もしくは自分よりも顔の造形が整った、美術品として寄贈されてもおかしくないほどに美しい男というものである。
さらに強く、自分より背が高い男だ。シルウィンの背は平均的なもので、その条件で除外される男は比較的少ない。しかし強さと美を両立するには難しすぎた。
シルウィンはあまり筋肉質な男を好まない。腕が太く腕力が強い男という時点で、シルウィンの王子様からは除外される。シルウィンは高い理想に、ある程度の矛盾を詰めたある種難しい理想を持っていたのだ。
かといって、シルウィンはただ夢を見ているわけではない。シルウィンは己の理想を構築する上で、その基盤となった人物がいる。それは王都の公爵家、カーティス・ディルセオンだ。彼はシルウィンより二つ年上の今年二十歳になる青年である。
そんな王都の公爵家であり当主であるカーティスと、辺境の末娘シルウィンにどんな接点があったかと言えば、十年前の王家が主催したパーティーに遡る。王太子エーベルと、公爵令嬢の婚約を発表するパーティーが開かれることとなり、辺境を守る当主は役目があるから行けないまでも、夫人とその子は招待しようという話になり、当時八歳であるシルウィンは、母であるリグウォン夫人とともに王都のパーティーへ向かうこととなった。